放電直前の温度が放電特性に与える影響 その2

放電を開始する際の温度を変えると放電特性にどのような影響があるのかもう一度調べてみました。前回の実験では充電後、75分間かけてセルの温度を意図的に変え、放電してデータを取りました。今回は充電直後に放電をおこなうセルと自然に温度が下がっていったセルのデータを比較してみることにします。

使用したセル: GP3700 ノンマッチド ザップ済み バラセルを4ヶ

次の手順で実験をおこないました(室温は22〜24度でした)


@単セル放電器でそれぞれのセルを放電する

A単セル充電をおこなう(6.0A)

B充電直後のセル温度を記録し、1つ目のセルを放電(20A)しデータ取得

C2つ目のセル温度が50度まで下がったら放電(20A)しデータ取得<--充電後約10分後

D3つ目のセル温度が40度まで下がったら放電(20A)しデータ取得<--充電後約20分後

E4つ目のセル温度が30度まで下がったら放電(20A)しデータ取得<--充電後約40分後

F1日インターバルをおき、@〜Eを繰り返す。ただしC〜Eの組み合わせは変える

これはセル1の放電電圧を比較したものです。

黒:充電後すぐ放電(58.5度)
赤:50度まで下がったら放電
緑:40度まで下がったら放電
青:30度まで下がったら放電

充電直後すぐに放電した場合は平均電圧、放電時間ともに良い結果が得られました。

50度、40度まで温度が下がったセルはほとんど同じカーブになっています。30度まで温度が下がってしまうと放電初期の電圧が低くなっています(放電が進み温度が上がると電圧も上がっています)

これはセル2の放電電圧を比較したものです。

青:充電後すぐ放電(59.0度)
黒:50度まで下がったら放電
赤:40度まで下がったら放電
緑:30度まで下がったら放電

充電直後すぐに放電した場合は平均電圧は良い結果が得られました。放電時間に関しては50度まで温度が下がったセルとほぼ同じでした

これはセル6の放電電圧を比較したものです。

赤:充電後すぐ放電(59.0度)
緑:50度まで下がったら放電
青:40度まで下がったら放電
黒:30度まで下がったら放電

充電直後すぐに放電した場合は平均電圧、放電時間ともに良い結果が得られました。

 

 

ここまでのデータを見る限り、差の大小はあるのですが、充電直後に放電した方が良い結果が得られることがわかりました。ただし放電後はかなりセルの温度が上がりますので寿命などに影響があるかもしれません。またレースなどでは充電スケジュールを考えなければならないでしょう(今回の実験では充電後10分経過すると温度が50度まで下がり、放電データに影響があることがわかりました)。

話はすこし脱線しますが、放電中にセル温度を観察してみると、高い温度で放電を始めた場合、充電初期にほとんど温度が上がらないことがわかりました。温度を上げることで内部抵抗が低くなっている(=電圧が上がる)のではないかと推測できます。

それでは今回得たデータとこれまでの実験データを比較してみます。

 

これはセル1のデータです

黒:充電後すぐ放電(58.5度)
赤:75分後6AでRepeak(49度)

赤線のデータはリピークの効果(GP3700)で得られたものです。

リピークをおこなったほうが放電時間が20秒ほど長くなっています(ただし1.0V以下の部分がダラダラと延びているようにも見えます)

電圧に関しては充電後すぐに放電した方が良い結果となりました。

これはセル6のデータです

赤:充電後すぐ放電(59度)
緑:75分後6AでRepeak(49.5度)

緑線のデータはリピークの効果(GP3700)で得られたものです。

やはりこちらも電圧は充電直後に放電したほうが、時間はリピークした方が良くなっています。

 

ただし上の2つのグラフでは、放電開始時のセル温度に約10度の差があります。これが放電データに影響を与えていることが推測できます。リピーク終了時の温度を制御することで高い電圧と長い放電時間を得られるかもしれません。今後はこの点に着目して実験を続けていこうと思います。